インタビュー
「南米で活躍する20歳プロサッカー選手 平識善昭の栄光と挫折、そこから這い上がれた理由とは 後編
(インタビュアー: 川良健二、 協力: 山崎りさ)
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自己紹介 ”川良健二”
ー人生100点から0点へ
川「さて、全てを賭けてやっていると言っていいサッカーですが、サッカー選手としての理想像というのはどのようなものですか?」
平識「これは小学生の時から変わらないんですけど、とにかく世界一のサッカー選手になるということです。この理想を恥ずかしく思ったこともありません。」
川「素晴らしいことです。やはり強い意志を感じますね。」
川「では少し辛いことを聞いてしまうようですが、そういった理想像に対して、今の自分を評価するとすれば、何点になりますか?」
平識「今やっと0点から始まった所です」
川「と言いますと?」
平識「ぼくは、去年まで自分は100点コースを歩んでいると思っていました。」
平識「それが去年リマのチームをクビになって、でも別に全然恥ずかしいことだとは思ってないんですけどね。そのおかげでちょっとそれまで自分を過信してたり、天狗になっていた部分に気付きました。順風満帆だったサッカー人生で始めての挫折でした。」
平識「”色々あって新しいチームで” プレイ出来ることになったので、今やっと0点から再スタートしたところです。」
川「なるほど、サッカー人生100点満点から0点になり、今また新しいスタートを切ったわけですね。」
平識のサッカー人生は今また0点から始まった。
復活したから100点に戻るのではなく、今0点から始まったのだ。
そしてこの再スタートは恥ずかしいものなんかでは決してなく、むしろ堅実に積み上げた経験として彼を支えているに違いない。
ー「お前、弱いな」
川「えーその『色々あって新しいチームで』という部分については良ければお聞かせください。」
平識「はい。実はリマのチームを退団した後、練習も何もせずに部屋に引きこもってヤケになっている時期が1ヶ月位ありました。その時はリマで日本人がよく集まるゲストハウスにいて、もう立ち直れないんじゃないかって思ってたんですけど。」
平識「そこで出会った8人の旅人たちがぼくの人生を変えてくれました。ぼく普段から、人に弱音吐いたり、相談したりって絶対してこなかったんですね、ずっとキャプテンやってたっていうのもあるし。でもその8人には、人生で初めてってくらいさらけ出して相談して、そこで色々話している中で彼らがぼくに立ち直るキッカケを与えてくれました。」
川「挫折があって、人生で初めて自分の弱い部分を人に見せたんですね。」
川「では、具体的に、自分を変えた一言というのはありますか?」
平識「はい、一生忘れない言葉だと思います。『お前弱いな』って」
平識「当時、ゲストハウスでその旅人たちと1週間位ずっと一緒にいたんですけど、最後の日くらいに、その中で元プロスキーヤーの”ケンさん”て人から、話切り出されて。ちょっとムキになったのもあるんですけど、言い合いになっちゃって」
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ケンさん『お前サッカーどうすんの?』
平識『いや、もう今が楽しいから今が良いすね。サッカーやってた時よりも楽しいっす』
ケンさん『お前、弱いな』
平識『どういうことですか?!ケンさん、おれだって色々苦労して克服しながらこの間まで順調に来てて、それで『弱いな』は無いんじゃないですか』
ケンさん『いや、お前弱いよ。クビにされたくらいで怖気付いて。格好悪いよ。』
平識『だってケンさんだって辞めたんじゃないんですか?人のこと言えないですよ!』
ケン『だから言ってんだよ!!お前の気持ちがわかるから、今のままでいて欲しく無いんだよ。サッカーに対する情熱は絶対お前の中に残ってるんだから、一晩よく考えろよ』
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平識「こんなやりとりがあって、一晩寝ずに考えて、それで最終的にクスコへ行くことにしました。ただ強豪チームがあるからって理由で。行ってダメだったらどうしようとか、全く考えてなかったです。」
川「クスコへ行ってからはどのような経緯で現在のチームに入団したんですか?」
平識「クスコではもう必死でした。警備員の目を盗んで、ノーアポでチームの監督に無理矢理接触しましたからね。それでなんとか頼み込んで、一回だけで良いから練習に参加させてくれって。それでオーケーをもらって、練習に参加させてもらったんですけど、やっぱりそこで思う存分やらせてくれるわけもなくて、本当に最後のゲーム練習10分だけプレイさせてくれたんですね。」
平識「その10分で2点決めました。そしたら周りの対応が一気に変わって、何から何まで聞かれて、すぐに契約ってなりましたね。たった10分で人生が変わりました。」
人がひたむきに頑張る時、夢に向かっている時、それを助けてくれる人がきっと現れる。人は1人じゃないんだ、と平識は付け加えた。
彼に起きたなんともドラマチックな出来事も、1人の力ではなく仲間皆の力が合わさった結果だった。
10分で人生が変わったのではなく、皆の力で彼の人生を “変えた” という方が正しいだろう。
ー「よくがんばったな」、父からの褒め言葉
平識「新しいクスコのチームに入団が決まって、それまで音信不通にしてしまっていた親に、やっと連絡することができました。お母さんボロ泣きしちゃってて。」
川「平識選手としても、連絡出来なくて辛かったことと思います。とても厳しいというお父さんはなんとおっしゃっていましたか?」
平識「父親は、ぼくがペルーで初めから成功することを望んでいなかったと言っていました。むしろクビにされて、都合が良かったって。それで一回くじけた後にどうやってリアクションするか。そこで潰れてしまえばそれまでだし、もしそこから這い上がってこれたなら『よくがんばったな』って言おうと思ってたって。」
平識「それで、生まれて初めて父親から『よくがんばったな』ってその時褒められました。」
川「その褒め言葉は、何物にも代え難い喜びだったことと思います。」
川「そんな出来事を経て、現在のクスコでのサッカー生活はどうですか?」
平識「リマの時とは全く違いますね。どん底から這い上がって来たから、ハングリーさがまるで違います。前までは、綺麗なプレーが良かった。だから試合でもスライディングなんてしなかったんですけど、今は練習だってスライディングしますからね。何がなんでもとってやるって。」
リマで出会った仲間たち、そして父からの初めての褒め言葉を胸に、平識は生まれ変わった。
順風満帆だった時代の綺麗なサッカーではなく、
泥臭くても良い、ハングリーなサッカーへ
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ここまでで彼のサッカー人生をザッと振り返らせていただいた。
インタビューを通して感じた疑問
「なぜ彼はそこまで強くなれるのか」
この答が今見えた気がする。
彼の強さを創り上げ、そしていまも支えているのは
父親や、他の周りの人間
つまり仲間の存在なのではないか、と
ー平識善昭の言葉
川「最後にお聞きします。これまでのそういった経験を踏まえて、何かみなさんに伝えたいメッセージというのありますか?」
平識「はい、中学の時からずっと意識している好きな言葉があります。『天才は有限、努力は無限』という言葉なんですが、やっぱりいくら才能があっても、努力しなければ上にはいけませんよね。努力の力は無限で、続ければどんな人にも必ずチャンスというのが来ると思う。
ぼくはリマにいた時それを感じました。入ったばかりの頃は人間関係がうまくいかなくて、それに新人イジメもかなりありました。でもそれに耐えて耐えて、我慢と努力を続けて、何ヶ月か経った頃に試合でのチャンスをものにして、やっと自分の立場を勝ち取ったという経験があります。」
平識「努力を続ければ、ピンチや逆境でもそれをひっくり返すチャンスが必ず来るはずなんです。そういった意味で『努力は無限』って思いますね。それを踏まえて、高校生とかぼくより若い子達にも、とにかくやりたいことに挑戦して欲しいなって思ってます。」
平識「もう1つ、これは今のクスコのチームが決まった時に見て、すごく共感したものなんですけど」
平識「人生における大きな喜びは君にはできないと世間がいうことをやることである、という言葉です。」
川「なるほど。どちらも平識選手が言うことで、より現実味や重みが増してくる言葉ですね。」
川「きっとこれからも無限の努力を続け、出来ないと周りに言われたことを実現させていくのでしょう。これからも平識選手の活躍を願っております。それでは本日はありがとうございました。」
平識「ありがとうございました!」
「天才は有限、努力は無限」
この言葉は平識善昭の人生そのものを表現しているようだった。
彼のためにこの言葉が用意されたのだろうか、それともこれは彼がその言葉を追いかけ続けた結果なのだろうか。
最後にそんな考えが頭を巡りながら、インタビューは幕を閉じた。
平識善昭はまさに努力の人と言えるだろう。
賞賛する他ない、彼の今の立ち位置も
何かものすごい偶然や、人の真似できない突飛な行動がそれを作り上げたわけではなく、
地道な忍耐・努力をひたすらに続けた結果「君にはできないと世間が言うこと」をようやく実現させてきたのである。
「人々に勇気を与えること」
それはプロスポーツ選手の果たせる、素晴らしい役目のひとつである。
彼の人生に勇気をもらった方も多いのではないだろうか。
そして彼の活躍はこれからも多くの人を励ますことだろう。
忙しいスケジュールの合間を縫ってインタビューに協力してくれた平識選手、また時間が無い中で写真撮影など協力をしてくれた山崎さんにはこの場を借りて改めてお礼を述べたいと思います。
ありがとうございました!
インタビュー・記事執筆
川良健二 | 世界のおもしろ話・写真集 〜次郎作ブログ〜
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